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Composition API で TypeScript を使用する

このページは TypeScript で Vue を使用する ページの内容をすでに読んでいることを前提にしています。

コンポーネント props の型付け

<script setup> の使用

<script setup> を使用する場合、 defineProps() マクロは、引数に基づいて props の型を推論できます:

vue
<script setup lang="ts">
const props = defineProps({
  foo: { type: String, required: true },
  bar: Number
})

props.foo // string
props.bar // number | undefined
</script>

これは実行時の宣言(runtime declaration)と呼ばれます、なぜなら defineProps() に渡された引数は、実行時に props のオプションとして使用されるためです。

しかし、通常は型引数で props の型を定義するほうがより単純です:

vue
<script setup lang="ts">
const props = defineProps<{
  foo: string
  bar?: number
}>()
</script>

これは型ベースの宣言(type-based declaration)と呼ばれます。コンパイラーは型引数に基づいて同等の実行時のオプションを推論しようとします。今回の場合、2 番目の例は最初の例と全く同じ実行時のオプションにコンパイルされます。

型ベースの宣言と実行時の宣言の両方を同時に使用することはできません。

props の型をインターフェースとして分離することもできます:

vue
<script setup lang="ts">
interface Props {
  foo: string
  bar?: number
}

const props = defineProps<Props>()
</script>

これは Props が外部のソースからインポートされた場合にも機能します。この機能は、TypeScript が Vue の peer dependency である必要があります。

vue
<script setup lang="ts">
import type { Props } from './foo'

const props = defineProps<Props>()
</script>

構文の制限

バージョン 3.2 以下では、defineProps() のジェネリック型の引数はリテラル型かローカルのインターフェースへの参照に制限されていました。

この制限は 3.3 で解決されました。Vue の最新バージョンは型引数の位置でインポートされた複雑な型の限定されたセットを参照することをサポートしています。しかし、型からランタイムへの変換は依然として AST ベースであるため、実際の型解析を必要とするいくつかの複雑な型、例えば条件型など、はサポートされていません。条件型は単一の props の型には使用できますが、props オブジェクト全体の型には使用できません。

props のデフォルト値

型ベースの宣言を使用すると、props のデフォルト値を宣言できません。これは、リアクティブな props の分割代入 によって解決できます:

ts
export interface Props {
  msg?: string
  labels?: string[]
}

const { msg = 'hello', labels = ['one', 'two'] } = defineProps<Props>()

3.4 以下ではリアクティブな props の分割代入はデフォルトでは有効ではありません。代わりに withDefaults コンパイラーマクロを使用します:

ts
export interface Props {
  msg?: string
  labels?: string[]
}

const props = withDefaults(defineProps<Props>(), {
  msg: 'hello',
  labels: () => ['one', 'two']
})

これは、ランタイム props の default オプションと同等にコンパイルされます。さらに、withDefaults ヘルパーはデフォルト値の型チェックを提供し、戻り値の props の型からはデフォルト値が宣言されているプロパティのオプションフラグが削除されていることを保証します。

INFO

変更可能な参照型(配列やオブジェクトなど)のデフォルト値は、偶発的な変更や外部からの副作用を避けるために withDefaults を使う時は、関数でラップする必要があることに注意してください。こうすることで、各コンポーネントのインスタンスがデフォルト値のコピーを取得することが保証されます。これは分割代入でデフォルト値を使う時は不要です。

<script setup> を使用しない場合

<script setup> を使用しない場合、 defineComponent() を使用して、props の型推論をする必要があります。setup() に渡された変数 props の型は、props オプションから推論されます。

ts
import { defineComponent } from 'vue'

export default defineComponent({
  props: {
    message: String
  },
  setup(props) {
    props.message // <-- 型: string
  }
})

複合型

型ベースの宣言では、props は他の型と同様に複合型を使用できます:

vue
<script setup lang="ts">
interface Book {
  title: string
  author: string
  year: number
}

const props = defineProps<{
  book: Book
}>()
</script>

実行時の宣言では、PropType ユーティリティタイプを使用します:

ts
import type { PropType } from 'vue'

const props = defineProps({
  book: Object as PropType<Book>
})

これは、props オプションを直接指定した場合とほぼ同じように動作します:

ts
import { defineComponent } from 'vue'
import type { PropType } from 'vue'

export default defineComponent({
  props: {
    book: Object as PropType<Book>
  }
})

props オプションは Options API でより一般的に使用されるため、Options API で TypeScript を使用するのガイドでさらに詳しい例を見つけることができます。これらの例で示されているテクニックは、defineProps() を使った実行時の宣言にも適用されます。

コンポーネントの emit の型付け

<script setup> では、emit 関数も実行時の宣言もしくは型ベースの宣言のいずれかを使って型付けできます:

vue
<script setup lang="ts">
// 実行時の宣言
const emit = defineEmits(['change', 'update'])

// オプションベースの宣言
const emit = defineEmits({
  change: (id: number) => {
    // バリデーションの合格/不合格を示すための
    // `true` または `false` を返す
  },
  update: (value: string) => {
    // バリデーションの合格/不合格を示すための
    // `true` または `false` を返す
  }
})

// 型ベースの宣言
const emit = defineEmits<{
  (e: 'change', id: number): void
  (e: 'update', value: string): void
}>()

// 3.3+: より簡潔な代替の構文
const emit = defineEmits<{
  change: [id: number]
  update: [value: string]
}>()
</script>

型引数には、以下のいずれかを指定します:

  1. Call Signatures で型リテラルとして記述される、呼び出し可能な関数型。これは、返される emit 関数の型として使用されます。
  2. キーがイベント名で、値が追加で受け付けるイベントのパラメーターを表す配列/タプル型である型リテラル。上記の例では、名前付きタプルを使用しているため、各引数は明示的な名前を持つことができます。

このように、型宣言によって、発行されるイベントの型制約をより細かく制御できます。

<script setup> を使用しない場合は、defineComponent() は setup コンテキスト内で emit 関数のイベント名を推論できます:

ts
import { defineComponent } from 'vue'

export default defineComponent({
  emits: ['change'],
  setup(props, { emit }) {
    emit('change') // <-- 型チェック / 自動補完
  }
})

ref() の型付け

ref は初期値から型推論されます:

ts
import { ref } from 'vue'

// 推論された型: Ref<number>
const year = ref(2020)

// => TS Error: Type 'string' is not assignable to type 'number'.
year.value = '2020'

時に、ref に対して複雑な型を指定する必要があります。そのような場合には Ref 型を使います:

ts
import { ref } from 'vue'
import type { Ref } from 'vue'

const year: Ref<string | number> = ref('2020')

year.value = 2020 // ok!

もしくは、ref() を呼ぶ時に型引数を渡すことで、推論された型を上書きできます:

ts
// 型: Ref<string | number>
const year = ref<string | number>('2020')

year.value = 2020 // ok!

もし、型引数を指定して初期値を省略した場合には、型は undefined を含む union 型になります:

ts
// 推論された型: Ref<number | undefined>
const n = ref<number>()

reactive() の型付け

reactive() も引数から暗黙に型を推論します:

ts
import { reactive } from 'vue'

// 推論された型: { title: string }
const book = reactive({ title: 'Vue 3 Guide' })

reactive のプロパティを明示的に型付けするには、インターフェースが使えます:

ts
import { reactive } from 'vue'

interface Book {
  title: string
  year?: number
}

const book: Book = reactive({ title: 'Vue 3 Guide' })

TIP

reactive() の型引数を使用することは推奨されません、なぜなら reactive の戻り値の型は、ネストされた ref をアンラップする処理を含む為、型引数によって与えられる型と異なるからです。

computed() の型付け

computed() は、getter の戻り値に基づいて型が推論されます:

ts
import { ref, computed } from 'vue'

const count = ref(0)

// 推論された型: ComputedRef<number>
const double = computed(() => count.value * 2)

// => TS Error: Property 'split' does not exist on type 'number'
const result = double.value.split('')

型引数を渡すことで、明示的に型付けすることもできます:

ts
const double = computed<number>(() => {
  // number を返さない場合は型エラーになる
})

イベントハンドラーの型付け

ネイティブ DOM イベントを扱う場合、イベントハンドラーに渡す引数を正しく型付けしておくと便利な場合があります。次の例を見てみましょう:

vue
<script setup lang="ts">
function handleChange(event) {
  // `event` は、暗黙の `any` 型
  console.log(event.target.value)
}
</script>

<template>
  <input type="text" @change="handleChange" />
</template>

型注釈が無い場合、event 引数は暗黙の any 型になります。tsconfig.json"strict": true"noImplicitAny": true にしている場合、これは型エラーになります。そのため、明示的にイベントハンドラーの引数を型付けすることが推奨されます。加えて、event のプロパティにアクセスする際、型アサーションを使用する必要があるかもしれません:

ts
function handleChange(event: Event) {
  console.log((event.target as HTMLInputElement).value)
}

Provide / Inject の型付け

provide と inject は通常、別々のコンポーネントで実行されます。注入された値を適切に型付けするために、Vue は InjectionKey インターフェースを提供します。これは、Symbol を継承したジェネリック型で、provider(値を提供する側)と consumer(値を利用する側)の間で注入された値の型を同期させるために使用できます:

ts
import { provide, inject } from 'vue'
import type { InjectionKey } from 'vue'

const key = Symbol() as InjectionKey<string>

provide(key, 'foo') // string 型以外の値を渡すとエラーになる

const foo = inject(key) // foo: string | undefined の型

複数のコンポーネントで import できるように、インジェクションキーは別のファイルに格納することが推奨されます。

インジェクションキーに文字列を使用した場合、注入された値の型は unknown になり、型引数で明示的に型付けする必要があります。

ts
const foo = inject<string>('foo') // 型: string | undefined

注入された値が undefined になりうることに注意してください、なぜなら実行時に provider(値を提供する側)がその値を提供する保証は無いからです。

デフォルト値を提供することで、undefined 型を取り除くことができます:

ts
const foo = inject<string>('foo', 'bar') // type: string

また、その値が必ず提供されることがわかっているのであれば、値を強制的に型アサーションすることもできます:

ts
const foo = inject('foo') as string

テンプレート参照の型付け

Vue 3.5 と @vue/language-tools 2.1(IDE の言語サービスと vue-tsc の両方をサポート)では、SFC の useTemplateRef() で作成された ref の型は、ref 属性が使用されている要素またはコンポーネントに基づいて、静的な ref の型を自動的に推論できます。

自動推論が不可能な場合でも、ジェネリック引数を使用してテンプレート参照を明示的な型にキャストすることができます:

ts
const el = useTemplateRef<HTMLInputElement>('el')
3.5 以前の使用方法

テンプレート参照は、明示的な型引数と初期値 null を指定して作成されます:

vue
<script setup lang="ts">
import { ref, onMounted } from 'vue'

const el = ref<HTMLInputElement | null>(null)

onMounted(() => {
  el.value?.focus()
})
</script>

<template>
  <input ref="el" />
</template>

適切な DOM インターフェースを取得するには、MDN のようなページを確認してください。

厳密な型安全性のために、el.value にアクセスする際には、オプショナルチェーンもしくは型ガードをする必要があります。なぜなら、コンポーネントがマウントされるまでは ref の初期値は null であり、参照されていた要素が v-if によってアンマウントされた場合にも null にセットされる可能性があるからです。

コンポーネントのテンプレート参照の型付け

Vue 3.5 と @vue/language-tools 2.1(IDE の言語サービスと vue-tsc の両方をサポート)では、SFC の useTemplateRef() で作成された ref の型は、ref 属性が使用されている要素またはコンポーネントに基づいて、静的な ref の型を自動的に推論できます。

自動推論が不可能な場合(例えば、SFC 以外の使用や動的コンポーネントの場合)でも、ジェネリック引数を使用してテンプレート参照を明示的な型にキャストすることができます。

インポートされたコンポーネントのインスタンスの型を得るために、まず typeof によって型を取得し、次に TypeScript の組み込みユーティリティーの InstanceType を使って型を抽出する必要があります:

vue
<!-- App.vue -->
<script setup lang="ts">
import { useTemplateRef } from 'vue'
import Foo from './Foo.vue'
import Bar from './Bar.vue'

type FooType = InstanceType<typeof Foo>
type BarType = InstanceType<typeof Bar>

const compRef = useTemplateRef<FooType | BarType>('comp')
</script>

<template>
  <component :is="Math.random() > 0.5 ? Foo : Bar" ref="comp" />
</template>

コンポーネントの正確な型がわからない場合や重要でない場合は、代わりに ComponentPublicInstance を使用できます。この場合、$el のようなすべてのコンポーネントで共有されているプロパティのみが含まれます:

ts
import { useTemplateRef } from 'vue'
import type { ComponentPublicInstance } from 'vue'

const child = useTemplateRef<ComponentPublicInstance>('child')

参照されるコンポーネントがジェネリックコンポーネントの場合、例えば MyGenericModal の場合:

vue
<!-- MyGenericModal.vue -->
<script setup lang="ts" generic="ContentType extends string | number">
import { ref } from 'vue'

const content = ref<ContentType | null>(null)

const open = (newContent: ContentType) => (content.value = newContent)

defineExpose({
  open
})
</script>

InstanceType は動作しないので、vue-component-type-helpers ライブラリーの ComponentExposed を使って参照する必要があります。

vue
<!-- App.vue -->
<script setup lang="ts">
import { useTemplateRef } from 'vue'
import MyGenericModal from './MyGenericModal.vue'
import type { ComponentExposed } from 'vue-component-type-helpers'

const modal = useTemplateRef<ComponentExposed<typeof MyGenericModal>>('modal')

const openModal = () => {
  modal.value?.open('newValue')
}
</script>

なお、@vue/language-tools 2.1 以降では、静的テンプレート参照の型は自動的に推論されるので、上記はエッジケースでのみ必要となります。

Composition API で TypeScript を使用するが読み込まれました